16週間トライアル掲載の新人発掘システムが特徴
日本のマンガを脅かす韓国発「ウェブトゥーン」 AI等の活用で急追の続き。
前回、韓国発で、世界のマンガ市場で急速に存在感を増しているネイバー・ウェブトゥーンを紹介した。
その日本語サービスである「LINE マンガ」も、フルカラーで、スマートフォンで読みやすい縦スクロールの作品を数多く送り出している。さらに新人を積極的に発掘し、作家として育てていく独特のシステムも特徴だ。
LINEマンガは、日本で講談社、小学館などといった日本の大型出版社と契約を結び、競争力のあるコンテンツをデジタル化して市場に送り出している。
ネットフリックスでいきなりトップ10入り
LINEマンガオリジナルのヒット作も生まれている。「外見至上主義」は2022年12月から動画サイト・ネットフリックスでアニメ放送が開始され、いきなり再生回数のトップ10入りした。
その他、「女神降臨」「先輩はおとこのこ」もヒット作だ。
新人発掘のシステムは「インディーズ」と呼ばれる。アマチュア作家から投稿された作品について、担当者が面白いと思ったら16週間、LINEマンガでトライアルの連載をすることができる。
もちろん原稿料も支払われる。
読者が多くつけば本連載につなげられる。本連載にならなかった場合は、作品の権利は作者に返されるので、他の出版社で再挑戦することも可能だ。
日韓協力によるマンガ文化の発展が目標
LINEマンガの広報担当の山下勝也さんは「私たちはマンガの未来を作るというコンセプトを掲げています。他の出版社さんやクリエイターと一緒に、日本や世界のマンガ文化をもっと発展させていきたいと思っています」と語った。
LINEマンガを展開するLINEデジタルフロンティア(東京・新宿)の、金信培(キム・シンベ)代表は一時帰国中の韓国で、われわれ日本メディアのインタビューに応じた。
「デジタルマンガ市場は年間10%単位で成長している。特に日本は世界でもマーケットが大きく、良質な作品を数多く送り出したい」と話す。最近もLINEマンガ日本の電子書籍販売サイトを100%子会社し、流通基盤を固めている。
初期のコンテンツはアクションが多かったが、女性のファンを増やすためファンタジーな作品や、世の中の流れを反映した作品にも力を入れているという。
「日本の人気マンガ家、東村アキコさんも、LINEマンガで連載をし、翻訳され韓国でも連載されました」(同)
競争ではなく協力
競争ではなく協力
「デジタルマンガを読むための専門の機器を開発するつもりはありません。今はスマホで読むのが主流なので、どうすれば読みやすくなるか。文字をどの程度大きくするかなど、スマホの画面に適合したコンテンツ作りを目指していく」と述べた。
フルカラー、縦スクロールのマンガは、雑誌中心に展開する日本の伝統的なマンガ市場を揺るがしている。
しかし、金代表は、「日本の出版社や作家とも協力していきたい。競争するのではなく、日韓が双方のいいところを生かしていきたい」と、あくまで共存を目指す考えを強調した。
LINEマンガの取り組みは、日韓の新しい協力モデルになるだろうか。
五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)、『新型コロナ感染爆発と隠された中国の罪』(宝島社、2020年・高橋洋一らと共著)、『金正恩が表舞台から消える日: 北朝鮮 水面下の権力闘争』(平凡社、2021年)など、近著『日本で治療薬が買えなくなる日』(宝島社、2022年)
@speed011