中国人が中国人を殺す

中国人が中国人を殺す

中国では天安門事件は検索もできない 出典 Luo Shaoyang [Public domain], via Wikimedia Commons

 「若い世代は天安門事件など一切教えられていないので、中国共産党が国民をあっさりと殺すという事実を、恐ろしさをまったく理解していないでしょう」

 と話すのは、来日25年を超える50代半ばの中国人男性Lさん。中国吉林省出身のLさんは現在、横浜を中心に複数の飲食店を経営している。

 先月末に中国各地で学生らを中心に発生したゼロコロナ政策への反対デモ、白紙運動と呼ばれるものだ。

 また中国人が中国人を殺すような事態は起こってほしくないとLさんは語る。

愛国教育世代の認識

 中国では1989年の天安門事件後、90年以降の世代を90後と呼ぶ。先日、死去した江沢民元国家主席が始めた反日を内政利用した愛国教育が施された世代だ。

 「90後は、江沢民さんの愛国教育の影響で中国への愛国心が高い世代なんですが、同時に中国を周辺の主要国と同じよう法治国家と勘違いしている世代でもあります。中国政府は国民である自分たちをサポートしてくれることはあっても、殺すとは頭の片隅にも思っていないのでしょう」

 また、豊かになり、海外旅行も解禁されたこの世代は、その前の世代とは異なり、留学や出張ではなく旅行として日本や韓国、タイなど海外の国を訪れている。

 そのため、他国を多少見聞した国民国家という概念があり、中国は中国共産党による一党独裁という政治制度の違いはあるが、中国も立派な法治国家、つまり“普通の国”であるとの認識を持っている世代だという。

 「私の父は教師だったので文革(文化大革命)の時に農村へ移住させられました。文革が終わって戻った後もいじめられて嫌な思いをしました。中国人同士を相互に監視させ疑心暗鬼にさせて対立構図を作り出すことで中央政府へ批判が向かないように。中国共産党は、党の指示に従わなかったら簡単に国民を殺すんですよ。これが現実です」(同)

「中国共産党をなめるな」

 Lさんは、90年以降に生まれた30代以下の若者たちは、愛国教育の弊害で中国政府を良くも悪くも独裁政権だけど普通の政府くらいに勘違いしているのではないか。正しくなければ、きっと改めてくれると思い込んでいるのではないかとも話す。

 先日、東京でも習近平政権に対する抗議デモが発生したが、Lさんは、「デモの参加者には、中国大使館の息のかかった関係者が混ざっていて誰が参加しているか全員把握しているはずだ」と語る。
 
 中国各地で行われた抗議デモには、参加者を装って紛れ込んだ関係者による人的チェックに加え、監視カメラ、スマートフォンの位置情報などを総合し、すでに参加者リストができあがっているはずだという。

 今後、その「ブラックリスト」を使って海外渡航や国内移動、就業などの制限に利用される可能性がある。

 Lさんは最後に「90後たちは中国共産党をなめないほうが良い」と警鐘を鳴らす。

 普通の国ではない中国へ反抗するなら一次的な感情で動くのではなく、より慎重さが求められるということだろうか。

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