富裕層を象徴する存在に
平壌1万人の在朝華僑が中朝貿易で大儲け 中国人も知らない実像とはの続き。
北朝鮮華僑は、その特別な地位を利用して、北朝鮮の海産物や特産品を中国に売り込んだ。その売上を使い中国の日用品を北朝鮮へ持ち込んで販売することで、北朝鮮華僑に莫大な利益をもたらせた。
1990年以降、北朝鮮の華僑は、富裕層を象徴する存在となった。
北朝鮮華僑の生活水準は徐々に向上し、今ではスマートフォンを使い、高級な家電製品を自宅に所有することが当たり前になっている。
華僑の中には、自家用車や高級マンションを購入する人もいる。これらは普通の北朝鮮人には手が届かないものだ。
金正恩(キム・ジョンウン)時代になってから、北朝鮮で暮らす華僑はさらに暮らしやすくなった。
北朝鮮の華僑は、中国と北朝鮮の貿易の架け橋となり、華僑が中朝貿易においてより大きな役割を果たせるようになったからだ。
北朝鮮にいる華僑は、自宅に国際電話を設置することが許可されている。華僑は北朝鮮の個人貿易市場をほぼ独占しているのだ。
子供の教育のために中国帰還を検討
私は平壌へ向かう国際列車の中で北朝鮮華僑に会ったことがある。彼は平壌生まれ平壌育ちで、奥さんは北朝鮮人である。
彼は北朝鮮華僑では若い世代で、両親も北朝鮮に住んでいる。
この若い華僑の話を聞くと、将来は中国で生活したいという。しかし、両親が高齢で北朝鮮の生活に慣れてしまっているので、中国へ移住するのは現実的には難しいとも話す。
私は彼と話をすることで、北朝鮮における華僑の状況がよく理解できた。
彼のように長年、中朝貿易に携わってきた若い北朝鮮華僑たちは、中国の発展を目の当たりにして、チャンスに満ちていると感じているようだ。その中には、彼のように中国に「帰って」暮らしたいと思っている人も少なくない。
彼ら北朝鮮華僑にとって、繁栄する中国の魅力は非常に大きい。
北朝鮮では、裕福な生活を送っている彼らであるが、中国とは医療、教育、生活の面で明らかに大きな差がある。
特に彼らは、子供によりよい教育を受けさせることを望んでいる。これが華僑が北朝鮮から帰還する動機となり、帰還者を増やしている。
このことは、近年、北朝鮮の華僑が減少傾向にあることにも関係しているのかもしれない。
中国から北朝鮮への投資仲介役も
北朝鮮華僑については、中国朝鮮族でも詳しく知る人は少ない。
ある朝鮮族実業家が言うには、「(北)朝鮮華僑は、中国語ができない人が多く、貿易目的などで中国に滞在していても中国人はもちろん、朝鮮語で会話ができる朝鮮族とも必要以上に接触をしたがらないんです。彼らは常に華僑同士か朝鮮人と行動をともにしています」
北朝鮮華僑は中朝貿易だけでなく、中国からの工場やリゾート開発などへの投資を仲介する役割なども担当している。
開通が延期となっている遼寧省丹東の新鴨緑江大橋の北朝鮮側の施設などへの投資も北朝鮮華僑が窓口となって呼びかけているとされる。