新型コロナ以前に戻った東南アジア各国

新型コロナ以前に戻った東南アジア各国

ベトナムにある日本食材店ではあるが、インスタント麺や商品の一部は韓国からのものも少なくない(著者撮影)

 新型コロナウイルスのまん延で世界的に旅行シーンが大きく変化した。

 東南アジア各国は、2022年の6、7月をめどに大きくかじ切りをした政府が多く、出入国条件をパンデミック以前の状態に規制緩和している。

 とはいえ、日本をはじめ、帰国する国、あるいは、出国先が厳しい規制を実施中の場合、なかなかその国の観光客は戻ってこない。

 日本人や韓国人がその代表例で、新型コロナ以前は、タイなどへの出入国者数が多かったものの、東南アジアの規制緩和後は観光客数が伸び悩んでいる。

 しかし、これらはいずれ日本や韓国も正常化すれば元に戻るとみられ、各国では、東アジア人観光客の受け入れを準備しているところだ。

 そんな中で、今後タイやベトナムなどの国では、韓国人観光客に期待が寄せられている状況だ。

韓国人の人気の秘密

 たとえば、タイは日本人観光客が多い国ではあったが、新型コロナまん延以前もすでに韓国人の入国者数の方がやや多かった。

 ベトナムなどでも東アジア人を見かけると大概が韓国人だったほど。実際、タイにおいては、日本人よりも韓国人の方が特に商売人からは人気がある。金払いの良い韓国人の方に人気が集まるようだ。

 日本は、韓国よりもずっと前からタイ観光ブームがあり、ネット上では、たくさんの情報が行き交う。

 リアルタイムで得られる情報の中には物価の話もあって、タイ旅行のリピーターだけでなく、初訪タイの日本人でもリアルなタイの相場観を持っていたりする。

 これがタイ人商売人からすると厄介で、韓国人に人気が集まっているということもあろう。

まず「韓国人?」と聞かれるベトナム

まず「韓国人?」と聞かれるベトナム

首都ハノイの焼肉店には韓国人客がほとんど見られない気がするが、メニューには韓国語がある(著者撮影)

 ベトナムは、タイ以上に韓国が浸透している。

 K-POPなどのエンターテインメントはもちろん、市中を走る車には韓国車も多い。韓国系家電の普及率も高く、韓国メーカーのスマートフォン製造工場も巨大だ。

 観光客も実際に多く、飲食店などでは、メニューにベトナム語と英語表記に加えて、韓国語が併記されている店もある。体感的には、日本語併記よりも増えつつある印象だ。

 そのため、飲食店やタクシーなどで気さくに話しかけてくれる人も、最初は「韓国人?」から入ってくるケースが増えてきた。

 タイの場合、中華系住民が元々多いこともあってか、韓国人・日本人の区別をつけて話しかけてくることが多いが、ベトナム人は商売人でも韓国人・日本人を見分けられる人がタイ人ほどはいないようだ。

 気さくに話しかけてくれる人の中には、英語がさほど得意ではない人もいる。

 そんな人は、スマホの自動翻訳アプリを使って話を続けてくれるのだが、日本人と伝えているにもかかわらず、中にはハングルで翻訳された画面を見せてくることもある。

とりあえず日本語で声をかける時代は終わった

とりあえず日本語で声をかける時代は終わった

わざわざ翻訳アプリを出してくれるのはありがたいが、ハングルを見せられることもしばしば(著者撮影)

 東南アジアでは、東アジア人にはまず日本語で話しかけるか、日本人かを確認することが20年くらい前までは当たり前だった。

 しかし、今はもうその時代は終わり、東アジア人を見たら「とりあえず韓国人」と思うのが普通になりつつある。

 日本という存在が、よく言えば、東南アジア人には身近になったとも言えるし、反面、日本が見向きもされなくなってきている証でもある。

高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)

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