“関東虐殺”の真相究明を求める市民団体が発足
7月12日、韓国で「関東虐殺100周忌追悼事業推進委員会(以下、推進委)」が発足した。1923年の関東大震災からまもなく100年になるのを前に、日韓歴史問題の新たな火種となりそうだ。
“関東虐殺”というのは、1923年9月1日の関東大震災が起こった時、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などの流言飛語が広がり、警察や民間の自警団などにより多数の朝鮮人が殺害された事件。日本では「関東大震災朝鮮人虐殺事件」と呼ばれる。
韓国では、「日本の警察と軍が『朝鮮人が井戸に毒を入れたり略奪したりしている』というデマを流し、戒厳令を発して軍を出動させ、自警団、警察、軍人によって6661人の朝鮮人が殺害された」とされている。
推進委は関東虐殺に関し、日本政府の国家責任と被害補償を要求する計画だ。
6661人が犠牲になったというが真相は不明
関東大震災時の朝鮮人虐殺事件については残された史料が少なく、真相は必ずしも明らかになっていない。
最も基本的な犠牲者数についてさえはっきりとはしない。
上海の大韓民国臨時政府の機関紙「独立新聞」が報じた6661人という数字が定説となっているが、この数字は少なすぎるという声がある一方で、誇張だとする意見もあるのだ。
推進委も発足式の宣言文の中で、「無念にも死んでいった朝鮮人たちが誰だったのか、なぜ死ななければならなかったのか、遺骸はどこに埋められたのか、遺族はどこにいるのか、彼らの死に対する責任は誰にあるのか、恥ずかしながら何1つわかっていない」と述べている。
発足式には、韓国の国会議員も出席し、祝辞を述べた。
韓国の新聞報道によれば、野党・共に民主党の柳基洪(ユ・ギホン)議員と無所属の尹美香(ユン・ミヒャン)議員は、「正しい歴史教育のための国会議員研究会で特別法を準備中で、今年9月1日に特別法を上程する予定」と語ったそうだ。
尹美香正義連元代表が特別法を準備
推進委の執行委員長を務める「1923韓日在日市民連帯」のキム・ジョンス代表は、推進委の主な事業として「特別法制定」「虐殺を知らせるための国際学術会議の開催」「99周忌と100周忌の追悼式の韓日での開催」「虐殺の真相を知らせる特別展、巡回展示の開催」を挙げている。
しかし、推進委の目的が真相究明にとどまらず、日本の謝罪と賠償にあることは、キム執行委員長の次の発言を見れば明らかだ。
「特別法が制定されれば、政府レベルの真相調査委員会が構成され、関東虐殺を日本政府が主導したことを明らかにし、国家責任と被害補償を公式に要求することになるだろう」
特別法の準備を始めている国会議員の1人尹美香議員は、元慰安婦支援団体の正義記憶連帯(正義連、旧挺身隊問題対策協議会)の前代表だ。
代表を務めていた当時、政府からの支援金や国民からの寄付金を個人的に流用していたなどと告発され、現在、公判中の身である。
デマを流したのは日本の軍と警察?
関東大震災当時、被害の大きかった東京や横浜で「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「地震後の混乱に乗じて朝鮮人が暴動を起こす」などの流言が広がったこと。それがデマであったこと。デマを信じた警察、自警団が多くの朝鮮人、朝鮮人と誤認された中国人、日本人を殺害したことは、今日残っている各種資料で確認できる。東京都墨田区にある都立横網町公園には犠牲者を追悼する碑も立っている。
しかし、韓国で言われるような「日本の警察と軍がそのデマを流した」というようなことを証明する資料はない。
写真で紹介の関東大震災実記には、流言の例として「(九月)四日東京から海路船橋町への避難者を不逞鮮人三百上陸し危険切迫すと云い触らす」という例が載っている。
日本に「謝罪と賠償」を求める新たな政治活動
現在、日韓の歴史問題となっている慰安婦や徴用工問題は、元慰安婦、元徴用工が原告となって裁判が起こされた。
しかし、関東虐殺は約100年前の事件であり、当時を直接知る者はいない。犠牲者やその遺族さえ、これから探すというのである。
確かに100年前の悲劇の真相を明らかにすること自体、意味のあることである。
しかし、最初から日本政府に責任があると決めつけ、「謝罪と賠償」を目的に追悼事業を推進するのは、慰安婦や徴用工問題に続く新たな反日政治活動を言われても仕方がないだろう。
この活動を後押しする政治家が、正義連前代表の尹美香議員だというのだから、なおさらである。
犬鍋 浩(いぬなべ ひろし)
1961年東京生まれ。1996年~2007年、韓国ソウルに居住。帰国後も市井のコリアンウォッチャーとして自身のブログで発信を続けている。
犬鍋のヨロマル漫談