動画で拡散したデマ
「オレンジを食べると新型コロナの検査が陽性になる」
そんな非科学的なうわさが、4月上旬に中国のインターネット上で拡散した。ちょうど、上海がロックダウンされる前後のことだ。
うわさでは、抗原検査キットにオレンジを数滴絞ると陽性反応を示すというもの。だから、抗原検査前にオレンジを食べると陽性になるというニュースが報じられたという内容だ。
当然ながらデマだ。
このうわさがデマであることを検証して伝える記事が、WeChat(ウィーチャット・微信)に残されている。
投稿日は4月6日、「オレンジで抗原検査が陽性?慌てないでこれが真実」というタイトルが確認できる。
記事によると、このうわさは、オレンジの果汁を抗原検査キットに数滴落とすると陽性になったという動画が元になっているという。
さらには、オレンジデマが拡散する直前の3月末には、コカ・コーラで陽性という同じようなデマ動画が拡散したと伝えている。
オレンジやコーラは検査結果に影響なし
新型コロナウイルスへの感染を判断する抗原検査は、中国でも広く使われている簡易検査法だ。
抗原検査は、新型コロナウイルスの構成成分であるタンパク質をウイルスに特異的な抗体を用いて検出する検査方法で、PCR検査よりは感度は落ちるとされるが、結果が15分ほどで出ることから日本でも併用されている。
記事では、抗原検査の仕組み上、オレンジやコカ・コーラを飲んでも結果には、まったく影響しない。信じ込んで拡散したりしないようにとの専門家のコメントを添えて発信している。
中国人をウイルスよりも恐れる中国人
上海在住者は振り返る。
「ロックダウンされた上海では、新型コロナで陽性になると、家族全員が強制的に隔離施設へ入れられました。その施設が耐え難い環境だったという映像がSNSで流れ、多くの人たちが検査で陽性になることを極端に恐れていました。そんな不安心理から拡散したデマでしょう」(上海在住の中国人男性)
中国では、今でも新型コロナで陽性になるとマンションごと封鎖されるため、周辺住民から恨まれたり、住めなくなったりするトラブルが各地で発生している。
日本は、例え新型コロナで陽性になっても隣近所にはわからない。
ところが、中国では、日本のようにプライバシーは保護されることはない。すぐに個人特定されてしまうようだ。
そのため、ウイルスよりも周りの中国人の目を気にして、家族から1人でも陽性者が出ないように神経を使っているのが現実。
陽性に…のウイルスを超える恐怖は、中国では今も続く。