24項目から平和を数値化

24項目から平和を数値化

GDP比1%の日本と単純比較で20倍以上ある北朝鮮の軍事費割合(提供 コリアメディア)

 日本は9位で中国は89位、米国129位、さらには、韓国が43位で北朝鮮は152位。

 これらは何の順位なのかと言えば「平和な国」のランキングである。

 これはオーストラリアにある国際シンクタンクの経済平和研究所が毎年発表している「世界平和度指数(GPI)」によるもの。6月16日に発表された2022年版ではこのような順位になっている。

 GPIは「対外戦、内戦の数」「戦闘による死傷者数」「近隣国との関係」「人口に対する難民の数」「人権尊重のレベル」「殺人事件の数」「暴動の可能性」「兵器の輸入量」「重兵器の数」など24項目のデータを使って、どれだけ相対的に平和であるかを数値化した指数だ。

戦争や内戦のない国がなぜこの順位に?

 北朝鮮は昨年も151位で、アジア諸国の中では最下位が定位置となっている。

 軍部と市民との闘争が頻発するミャンマーよりも下位。北朝鮮の1つ下の153位には、ウクライナがランキングされている。

 戦場となっている国と変わらないレベル。他の150位以下の国を見てみるとシリアやイエメン、アフガニスタンなど戦争や内戦が継続中で、戦闘に巻き込まれそうな危険のある国ばかりだ。

 核開発や弾道弾発射実験などで軍事的挑発を繰り返す北朝鮮だが、他国と戦争や内戦、暴動は起きていない。また、現時点ではすぐに戦争が起こるような兆候もない。

 似たような順位にある国々と比べると、かなりましにも見えてくるのだが…。なぜ、こうなってしまったか。詳しく見てみよう。

 たとえば、「軍人の数」「警察、治安維持部隊の数」といった項目。朝鮮人民軍の兵力は約128万人、これに加えて約55万人の予備兵力を確保している。

GDP比20%を超える突出した軍事費

 総人口の5%近くが現役の軍人なんて国、他にはない。それに独裁国家だけに治安維持部隊の兵員数も世界有数とくれば、この項目での数値も世界最低レベルになるのは当然か。

 また、北朝鮮の国民総生産(GDP)に占める軍事費の割合は、毎年度20%を超えている。軍事費の割合が多い中東諸国でも10%前後だから、世界的に見ても突出した数字だ。

 それも「平和な状態ではない」という判断を下されたようである。

 さらに「暴動により発生する経済コスト」がGDPの30%近くにもなり、一度それが起こると体制崩壊は必至。収束の見えない戦乱が続くことも予想される。

平和度指数では計れない国の安全

 しかし、平和度指数の調査方法に関しては、批判も多々あり。たとえば、米国などは、軍事費支出の多さから順位を下げている。

 が、その軍事力に守られ自国の軍事支出を抑えてきた日本のような国もある。軍事費の額では、その国の平和・安全を推し量ることはできない。

 改めて冷静に考えてみれば…、北朝鮮と米国が戦争を始めると、平和な国のトップテン入りを果たした日本も、当然、それに巻き込まれることになる。

 ランキングには意味がない…。そう思ってしまう。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。 

\2022年6月28日新発売/
明治維新の収支決算報告』(彩図社)

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