タイ人死者の84%が無許可労働

タイ人死者の84%が無許可労働

タイの貧困層は教育水準も低く、ついウマい話に乗ってしまいがちなのも、外国での不法就労者を増やす一因

 韓国の英語メディアで不法就労とみられるタイ人が、韓国国内で多数死亡していると報道された。

 記事によれば、2015年以降、韓国内で522人のタイ人が亡くなっており、そのうち84%が労働許可などの公的な文書などで証明されない労働者であり、「小さな幽霊」として国連にも報告されているという。

 タイ外務省の認識によれば、2015年から18年にかけてタイ人が韓国内で283人が死亡しており、この数は、タイ以外の国で最も多い数になるという。さらに、2020年はタイ人の韓国内死亡者数は、過去最高になったとみられる。

 ただし、新型コロナウイルスの因果関係は不明だ。なぜなら、これらは不法就労者の数であり、タイ政府、韓国政府の双方に詳細なデータすらない状態だからだ。

海外で働くタイ人労働者の40%が韓国に

 タイ外務省によれば、およそ46万のタイ人が、外国で合法・非合法問わず就労しているとみられる。そのうち18.5万人が韓国にいる。

 2010年頃から韓国や中国で就労するタイ人は増えていたが、韓国でタイ人労働者がここまで増加したのは、2018年の平昌冬季オリンピックに絡んだ仕事が期待されたためだ。

 在韓タイ大使館は、この18.5万人の中で韓国政府の移民向け労働許可制度を利用しているのは、わずか10分の1に過ぎないとみている。

 タイと韓国は相互にビザなし渡航の緩和を実施しており、タイ人も韓国へは約3か月ほど滞在できる。

 一部は個人でこの制度を利用して韓国に入国し、滞在期限を過ぎてもそのまま就労していると考えられる。あるいは、タイ国内のブローカーに手数料を支払って韓国国内の仕事を斡旋してもらい、合意の上、もしくは、騙されて就労している可能性もある。

 いずれにしても、ビザがないことで正規の仕事を得られない、また、不当な扱いを受けても訴え出ることができない。

今後、韓国も不法就労者に悩まされる?

今後、韓国も不法就労者に悩まされる?

相互に渡航しやすい関係ではあるが、そのビザの制度が悪用された結果、不法就労者が増えているとみられる

 日本も景気が良かった時代には、たくさんの東南アジア人が日本に押し寄せ、不当な扱いを受けても働き続け、警察に摘発されて強制送還されるまで日本に居続けた人も少なくない。韓国でも同様の事態になっている。

 こういった状態でも帰国しないのは、韓国内では、平均13万円は稼げるという事情もあるようだ。

 タイの平均世帯収入は月9.5万円程度。

 しかし、格差社会のタイなので、平均値では、これだけでも実際に9.5万円以上を稼げる人は実は、かなり少ない。

 ブローカーを通している場合には、高額の手数料をすでに搾取されていて、その分の元を取ろうという心理も働いて不当でもその仕事にしがみついてしまう人もいるだろう。

 現在は新型コロナウイルスの蔓延も問題だ。

 不法滞在の場合は、ワクチン接種はまず不可能だ。呼び出すこともできないし、例え呼び出されてもワクチンを公の場に打ちに来る不法就労者はいないだろう。

 タイは2020年の初頭には、国内感染者が減り抑え込みに成功していると賞賛されたものの、同年12月頃に急激に国内感染者が増加したのは、不法入国・就労のミャンマー人が原因とみられている。

 タイの場合は、隣国と陸続きであるため、不法入国者は多いが、韓国も不法就労者に今後、悩まされるかもしれない。

高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)

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