原潜を持つ仏英よりも上の世界6位
世界的権威を誇る軍事評価機関である米国のグローバル・ファイヤーパワーでは、毎年各国の軍事力レベルを分析して、それを順位付けした報告書が作成している。
世界のマスコミもこれに注目して「世界軍事力ランクキング」として発表されるのだが、それによると、2021年の韓国の軍事力は世界第6位となっている。
日本のSNSでは、韓国軍の相次ぐ不祥事や欠陥だらけの韓国製兵器が、よく物笑いの種なったりもしているのだが。しかし、世界は、その実力を高く評価しているようだ。
原子力潜水艦や空母を保有する英仏の順位が、その後塵を拝して7位と8位なのだから、韓国の軍事力は、世界トップクラスということで間違いないだろう。
2017年12位から18年7位への爆上げ要因は?
さて、世界軍事力ランキングをさかのぼると、2018年の韓国は第7位だった。
この時に世界のトップ10入りを果たしているのだが、さらに1年前の2017年には12位。わずか1年間で飛躍的に軍事力が増強されたのか。そのあたりをもう少し深く掘り下げて見てみよう。
2017年の韓国軍の戦力は、予備役を含めた兵員が582万9750人、戦闘機406機、戦車2654輌、主要艦艇166隻、軍事予算438億ドルとなっている。
順位が爆上げとなった2018年の兵員数、戦闘機や戦車、艦艇などの装備もほとんど変化がない。軍事予算に至っては400億ドルに減っているのだが…。
ランキングには兵站能力、回復力、地理経済学的安保、資源安保、国内の安全など多岐にわたる項目がある。順位を決めるのは兵力や装備だけではない。
韓国の順位を上げたのは、国防ネットワーク能力や回復力で高ポイントを得たことが大きかったという。
軍需は韓国経済が最も期待する成長産業
防衛力のそのものは、トップテンに入っておらず、北朝鮮の弾道弾発射実験で度々目標をロストする失態をやらかした核抑止力などは25位とかなり低い。
兵隊や戦闘機、軍艦の数だけでは、1国の軍事力を測ることはできないということだ。
そこで注目するべきは、ここ最近はめざましい発展を遂げている韓国の軍需産業だろう。
兵器や装備を外国に頼らず、どこまで国産化できるか、それは兵站能力や回復力にもかかわってくるだけに、ランキングを上昇させた大きな理由になっていることは間違いない。
韓国軍需産業全体の売上高は、2001年に3兆7013億ウォン(約3500億円)だったが、2019年には13兆9431ウォン(約1兆3200億円)と4倍近くも増えている。
2016年には世界1の伸び率を記録し、成長産業として有望視される存在だという。それを聞けば「軍事大国」という言葉も不釣り合いとは思えない。
日本が第5位というのも謎なのだが…
一方、日本の軍事力ランキングも2018年の7位から順位を少しずつ上げて、2021年は、韓国の1つ上の世界第5位。徴兵制のある韓国とは違って兵力はわずか25万人、戦車の数も韓国軍の半分に満たない約1000輌、戦闘機も300機と少ないのだが。
それでも韓国よりも上に位置しているのは、F-35戦闘機など最新の兵器をそろえていること。また、整備能力や部品調達能力で、繊細で壊れやすい最新ハイテク兵器の稼働率を世界有数のレベルで維持しているのも大きなポイント。
さらには、島国という防衛に適した地の利に加えて、イージス艦や通常動力型では、世界最強の潜水艦群がそろう海軍力などが要因だろうか。
1国の軍事力を測る尺度は様々、我々のような素人にはよくわからない点が多い。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。