江原FCの高校生ボールパーソンが遅延行為

江原FCの高校生ボールパーソンが遅延行為

2012年まで江原FCのメインスタジアムだった江陵総合競技場 出典 Slfsp3645 [Public domain], via Wikimedia Commons

 韓国サッカーのKリーグでボールパーソン(※)の遅延行為が物議を醸していると韓国のメディア各社が伝えている。

 特にホームチームの代表が、同日に擁護発言をして火に油を注いだ。

 発端は12月12日に「江原FC」のホームで行われた「大田ハナシチズン」との昇降格プレーオフ第2戦だ。江原は1戦目のアウェー戦を落としたが、2戦目は勝利してリーグ1部の残留を決めた。

 事件は後半終盤に起きた。ホームの江原が用意したボールパーソンは、同チームユースの高校生たちだった。彼らは、スローインのボールを要求する大田の選手と反対方向にボールを投げたり、ボールが来ても座ったまま拾いに行かないなどの行為を行った。

 これらを審判団は露骨な遅延行為と指摘し、ボールパーソンの交代を命じた。

「欧州ではよく起きていること」発言で炎上

 問題は江原の代表取締であり、元韓国代表のイ・ヨンピョ氏が、ボールパーソンを擁護する発言をしたことだ。

 試合当日の韓国メディアに同氏は「欧州ではよく起きていること」と、ボールパーソンの行為を自然なことだと言ったことで、韓国のサッカーファンの間で炎上。

 14日にイ・ヨンピョ氏が、SNSを通じて公式の謝罪をしたものの、韓国内での議論はまだ消えていないようだ。

 イ・ヨンピョ氏が言うように、確かに欧州リーグでは時々ボールパーソンの遅延行為が見られる。

 通常ホームチームのユースなどが採用される。そのため、ホームのファンであることが多く、ときにホーム側に有利になるような遅延行為を行う様子は見られる。

 これが試合の流れを大きく変えることもあり、現地でもメディアに大きく取り上げられることもある。

ボールパーソンによる遅延行為がほんんどないタイ

ボールパーソンによる遅延行為がほんんどないタイ

タイのサッカーリーグは熱狂的ファンも多い

 では、アジアのプロリーグではどうか。日本のJリーグにおいてもごくまれにボールパーソンによる遅延行為がある。

 一方、東南アジアで日本人選手の活躍も多いタイは、ボールパーソンの遅延行為はほとんど見られない。

 現地で活躍する日本人サッカージャーナリストによれば、「タイの子供は良くも悪くも大人の言うことを聞く子ばかりだからそんな行為はしない。たくさんの試合を長きに渡ってピッチレベルで見てきたが、一度もそんな行為は見たことがない」という。

欧州とアジアで反応に大きな違い

欧州とアジアで反応に大きな違い

ファンが熱狂的だし、チーム経営者はハイパー富裕層ということも抑止力になるのか、ボールパーソンも下手なことはしない

 また、Jリーグと欧州リーグでも審判の判断やファンの反応に大きな違いがある。

 1秒でもボールを渡すタイミングがずれたら試合の流れが変わるサッカーでは、その一瞬を遅延行為とするかどうかが難しい。

 試合中の選手は、興奮状態にあり、激高しやすい面もある。ボールパーソンの遅延行為と見た選手は、多くが暴言や暴力行為をし、その問題が浮き彫りになる。

 ほとんどのケースで選手が、何らかのペナルティーを受ける。暴力行為は、いかなる理由でも一発レッドカードは理解できるが、一方で遅延行為が明らかでもボールパーソンは、多くがおとがめなしだ。

 今回の韓国では、ボールパーソンは交代となったが、欧州の場合は、ファンが遅延行為をしたボールパーソンの素性を調べてネット上に公開する事件も起こった。これによって公開された子供はもうボールパーソンになれなくなった。

 ホームチーム愛もわからなくもないが、試合の流れも読める分別のある年齢なのだから、その感情は押し殺してフェアにボールパーソンをやってもらいたいものである。

※メディア各社においては、試合を円滑に運ぶために配備される「ボール拾い」の役目を「ボールボーイ」と記載するが、近年Jリーグなどでは性差別になることから「ボールパーソン」と改めている。本文も一般的なボールボーイをボールパーソンとした。

高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)

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