ユーチューバーの嫌韓発言に韓国内で怒りの声
『「韓国人女性の35%が売春」…外国人インターネット放送人、でたらめ嫌韓妄言』
というのは、12月10日の中央日報日本語版にあった記事タイトル。ユーチューバーのガブリエルなる人物が、「韓国人の女性の約35%が金銭的な補償を見返りに性的関係を持つ」と発言して、これが韓国人ネットユーザーたちの怒りを買っているという。
しかし、日本でも各地にソープランドやデリヘルなど風俗産業はあふれている。
「援助交際」や「パパ活」などと都合よく言葉を置き換えて、それを売春行為と認識していない者も多い。また、貴金属やブランド品をもらったりしても、女性に対する「金銭的な補償」ということにならないか。
プレゼントの類までまで含めれば、どこの国も35%くらいでは、とても収まらない数字になりそうだが…。
ユーチューバーのガブリエル氏が、どのようなデータからこの数字を出してきたのかはわからないが、日本のSNSでも「韓国は売春婦の輸出大国」とかいう発言はよく聞かれる。
韓国に対してそういったイメージを持つ者は、世界中に少なからずいるようだ。
性売春特別法施行が仇(あだ)となったか
そのイメージができあがったのは、2004年に制定された性売春特別法にあるのかもしれない。
この法律により韓国内の売春産業は、摘発で軒並み廃業に追い込まれた。
韓国政府の女性家族省の調査によると、当時の風俗産業は国家予算の6%に達する経済規模だったという。
2002年には韓国内で1億7000万回の売買春取引があったというから、韓国の成人男性が1人年間5回は買春していたことになる。
性売春特別法施行以前には、売春産業で働いていた女性が150~190万人もいたという。摘発によって、その女性たちが一気に海外の風俗産業に流れていった。
女性家族省は2012年5月に「海外で売春産業に従事する韓国人女性の総数は約8万人」と発表。そのうち約2万人が日本に渡ったという。
また、欧米にも多くの韓国人売春婦が進出し、オーストラリアでは、市民団体が2011年に実態調査を行って、歓楽街で売春に従事する韓国人女性は1000人以上になるという報告がされている。
アジア系のイメージは「売春婦と尻軽女」!?
韓国の売春産業が壊滅し、そこで働く女性たちが海外に流出した2000年代から2010年代にかけて、日本や米国、オーストラリアなどでそれに関する報道がよくされた。それでイメージがすっかりできあがったようである。
欧米では、顔つきや肌色の違うアジア人は、どうしても目立つだけに、それが歓楽街で急激に数を増やせば、男たちには、かなり強烈なインパクトを与えるだろう。
では、「韓国以外の国々から自国にどれだけの売春婦が流れてきたのか?」そういった他国との比較は見当たらない。
同じ顔立ちや肌色の同族たちの国々からやってきた売春婦には、その国籍などいちいち気にもしないだろうし…。
また、日本人もそれを冷笑してばかりもいられない。
90年代の米国では日本人女性が「イエローキャブ」というスラングで呼ばれたりもした。
タクシーのイエローキャブは、手を上げればすぐに乗れる。それと同じで日本人女性は、誘えばすぐに肉体関係が持てる「尻軽女」という意味だ。
売春婦は、性サービスを金で売る職業。だが、“タダでヤラせる”イエローキャブは、貞操観念が薄く、男には都合のいいバカ女と、もっと軽蔑される。今も日本人女性に対するイメージは残っているのかもしれない。
韓国人女性の売春婦や日本人女性のイエローキャブも、欧米人のアジア系人種に対する偏見が影響しているところが大きい。冷笑するよりは怒るべきだろう、日本人も。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。