接種率8割なのに初の5000人突破
韓国は11月30日、新型コロナウイルスの新規感染者が5123人となり、初の5000人超えを記録。増加傾向に歯止めがかからない。
韓国は、コロナワクチンの調達に失敗し、当初はワクチン不足で接種が遅れた。しかし、物量が確保できた今年6月頃から、すさまじいスピードで遅れを取り戻す。
今では、国民の79.46%(11月27日現在)が2回目の接種を完了。スペインに次ぐ世界第2位の接種率を誇っている。
この数字を達成したことを政府も国民も誇りにしていた。9月下旬には1日3000人を越えた感染者数もその後は減少に転じ、10月中旬には1000人を下回る。
接種率70%を越えたところで、防疫措置による制限も解除されて、いよいよコロナも過去のものになる…と、そう思っていた矢先。再流行が始まってしまう。
10月下旬から感染者数が再び増加し、11月に入ると1日2000人台に。11月中旬には、3000人を超えて、11月24日発表の新規感染者数は4115人。
感染者が急減した日本の状況にびっくり
ワクチン接種が進んだ欧米でも同様にコロナが再流行している。が、韓国とは事情が違う。
欧米では、今年1月頃からワクチン接種が始まり、多くの人々は、接種から半年が経過している。そのため、抗体は減少し感染者増は、ワクチンの効力が薄れたことが原因と考えられる。
接種が遅れた韓国の場合は、半年近いタイムラグがある。計算上では、大半の国民にはまだ、ワクチンによって十分な免疫がついているはずなのだが。
一方、日本では、今年8月20日に2万5851人の感染者を記録するが、その後は急激な減少に転じた。
9月中旬には感染者数が半減して1日1万人以下となり、10月には1000人を下回る。11月になると1日の感染者数100人台の日が続いている。
日本でもワクチンの接種時期が遅れ、本格的に始まったのは5月頃から。接種率や接種時期が、ほぼ同じなだけに韓国でも日本の状況に注目が集まる。
朝鮮日報の日本語記事でも「4115人対113人」と、今月23日の韓国と日本における感染者数を比較して、あまりの違いに驚き、その理由について検証されていた。
「日本ではPCR検査を受ける人が少ない」韓国人の疑念
まあ、理由については、誰もが想像がつきそうなことではあるのだが、1つは、感染減少後もマスクを着用して、大勢での会合を避ける日本人の慎重な性格である。
さらに、2つ目が検査数の違い。「日本ではPCR検査を受ける人が少なく、感染者数を正確に把握できていないではないか?」というのは、以前から多くの韓国民が抱いていた疑念だった。その結果、多くの無症状感染者が発生して、ある程度の集団免疫を獲得した可能性があると示唆している。
これについては、日本の自治体などが実施した抗体保有率検査で否定的なデータがそろっており、韓国の研究者たちの間でも「それはない」という否定的な意見が多かった。
使ったワクチンが悪かったのか?
最後に3つ目の理由としてあげられたのが、使用されたワクチンの違い。日本で使われたのは、ファイザーとモデルナのmRNAワクチンでほぼ占められる。しかし、韓国は、自国メーカーで委託生産しているアストラゼネカが27%、また、米国から供与されたヤンセンなどのウイスウベクターワクチンも使った。
mRNAと比較してウイルベクターワクチンは、感染防止効果が低く、抗体が減少するのが早いと言われる。そのせいではないかというのだ。
この3つの目の理由には、納得している韓国民も多かった。しかし、同様のアカトラゼネカのワクチンを多く使用した開発国の英国などは、少なくともワクチンの効力が高い初期の頃には絶大な効果をあげている。
「使い方に問題があったのでは?」そんな意見もある。
アストラゼネカ製のワクチンは、1回目の接種から4週間後に2回目を接種することになっている。しかし、韓国では、1回目のワクチン接種を急いで物量を使い切り、ワクチン不足のために接種間隔を6週間に延長。6週間を過ぎても2回目の接種ができない人が多くいたという。
果たして、このメーカーの意向を無視した措置がどんな影響をもたらしたのか。
それについて現時点ではわからないのだが…、勝手に無茶をやらかして、責任を他国に押し付ける。そのやり方は、他の事柄でもよく見受けられる。
もはや「お家芸」といった感じもあり、お家芸発動で乗り切ろうとしているのではなかろうか。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。