567万円分以上の保険加入が条件
タイ政府は、新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けている観光業界のために11月1日から外国人入国時の隔離免除など規制緩和を実施。2020年3月下旬から続く鎖国状態だったタイがこの日、実質的な開国に踏み切った。
ただし、隔離免除は、タイ政府が指定する63の国や地域からの入国者に限られる。リスト入りしているアジアの国は、日本や韓国、中国やカンボジアなど。
免除は条件付きで、まず各国大使館が開始している「タイランドパス」という申請システムを通して入国許可を取得。指定国に出発前21日間以上滞在し、2回以上のワクチンを接種し14日以上が経過していること。さらに、入国前72時間以内のPCR検査の陰性証明、入国時および到着7日後のPCR再検査が要求される。
また、治療費5万ドル(約567万円)以上を補償する保険に加入していることなど、様々な条件をクリアしていなければならない。
規制緩和開始2日間の入国者に感染者6人
入国免除が始まった1日と2日で4510人の外国人が入国。しかし、このうち6人が検査結果が陽性だった。タイでは今年4月から8月にかけてコロナ第3波とされる深刻な感染拡大が見られ、11月に入っても毎日7000人超の新規感染者が国内で確認。これらは変異株と呼ばれるタイプが猛威を振るっているとされ、タイ人や在住外国人の中には、規制緩和に不安の声を上げる人もいる。
緩和後の11月3日、タイのオンラインメディアで観光業セミナー「Boost Up Thailand 2022」が開催された。
これに出席したタネート・ペットスワン・タイ観光庁アジア・パシフィック・マーケティング担当副長官が、同メディア内で明かした内容によれば、毎週金曜、80~100人の韓国人がスポーツツーリズムの一環としてタイ北部チェンマイに直接チャーター便で訪問、北部ラムプーン県でゴルフを楽しむという。
入国者らは15日間滞在し帰国予定で、第1便は同5日の87人を予定。同氏によれば、この入国者たちは一般的な観光客の2.5倍の予算を持って入国するとみられ、同地における経済的効果にも期待している。
人件不足でホテル料金高騰
同セミナーでは、タイ観光の懸念材料も語られた。特にホテル宿泊費の上昇が取り上げられている。観光客が激減したタイでは、各地のホテルが規模を縮小か休業。廃業したところも少なくなく、外国人がいま急に増えてもホテルがないのが現実だ。
なんとか営業をしていたホテルは、観光客増加を見込んで従業員を呼び戻す予定ではあるが、1日あたりの賃金が300バーツ(約1050円)程度だったこれまでから、倍の600~700バーツにしなければ呼び戻せない状況にあるという。
ホテル料金値上げは、タイ人や在住外国人からすでに指摘の声があり、11月1日の開国を前に各地のホテルが値上げを実施。鎖国中は通常よりも半額から70%オフになっていたようなところがほとんどだったため、値上がり率がより高く感じられる。
結局、観光業界のために規制緩和に踏み切ったものの、タイ観光の本当の再開・復興はまだ先なのかもしれない。
高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)