金与正氏ら国務委員に昇格
金正恩(キム・ジョンウン)総書記の実妹である金与正(キム・ヨジョン)党副部長が、ついに国務委員会委員に名を連ねた。9月30日付の党機関紙・労働新聞が伝えた。
北朝鮮では9月28日から最高人民会議第14期第5回会議(国会に相当)が開かれ、その中で金与正氏が選出されるなど国務委員会に大幅な人事刷新が行われたと報じている。
国務委員会は、国家主権の最高政策指導機関。国家全般の事業や条約批准、人事など国政全般を所管しており、トップである委員長は金正恩氏が務めている。
金与正氏、党・政府で重要ポスト兼任
金与正氏は、すでに朝鮮労働党では宣伝扇動部副部長、議会では最高人民会議代議員という肩書を保有しており、今回政府(国務委員会)でも要職を担うことになった。党・政府の両方で高位職に就いたことになる。
金与正氏の役割については謎が多い。今年1月に開催された第8回大会で党政治局候補委員から外され、党第1副部長から副部長に降格したが、その後も従来通りに韓国や米国に向けて談話を発表するなど、職責を越えた働きを行なってきたからである。
党の序列や役職とは無関係に対南関係全般を任せられていると考えられるが、今回政府で要職を得たことで、さらに金与正氏が南北対話の前面に出てくる可能性がある。
金正恩総書記の最側近が国務委員選出
労働新聞では金与正氏以外の国務委員会人事も発表されており、大幅な人事刷新が行われたことがわかった。
まず、金徳訓(キム・ドクフン)内閣総理を国務委員会副委員長に補選したと発表。
続いて、海外メディアでは金与正氏と並んで「ナンバー2」候補と指摘されることが多い趙甬元(チョ・ヨンウォン)党書記と、9月に党最高指導部である政治局常務委員に就任した朴正天(パク・ジョンチョン)党書記も国務委員に選出された。2人は金正恩総書記の最側近であり、国務委員会入りでさらに影響力が強化されるとみられる。
その他、呉秀容(オ・スヨン)氏、李永吉(リ・ヨンギル)氏、張正男(チャン・ジョンナム)氏、金成男(キム・ソンナム)氏も国務委員に補選されている。
米朝交渉の中心人物である崔善姫氏が解任
一方で、国務委員会9人が解任となった。これまで内閣総理などを歴任してきた最高齢の朴奉珠(パク・ポンジュ)前内閣総理が解任された。世代交代のための人事とみられ、同人はすべてのポストから外れたことになる。
また、米朝交渉で中心的な役割を果たしてきた崔善姫(チェ・ソンヒ)第1外務次官も解任されている。同会議で姿勢演説を行なった金正恩総書記が「対米戦略的構想を徹底的に実行するための戦術的対策を立てることに万全を期す」と発言していることから、同人の解任は、新しい対米戦略的構想による人事刷新とも考えられる。
八島 有佑
@yashiima